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展覧会Exhibitions

糊の文化 型染と筒描き展

1999.10.23 - 1999.11.14

開場時間
10:30〜18:30(最終日17:00)
休館日
無休
入場
無料
会場
京都精華大学ギャラリーフロール
主催
京都精華大学
特別協力
株式会社 染織と生活社
後援
京都府教育委員会、京都市教育委員会、 NHK京都放送局

概要

秋の企画展として開催されるこの展覧会は、産業構造の激変に伴い崩壊の危機にある京都の染織産業を視野に入れ、本学所蔵の「型紙(かたがみ)」コレクションを中心に「型染(かたぞめ)」と「筒描き(つつがき)」の個人コレクションにより、歴史的作品を約70点展示いたします。
「型染」と「筒描き」の技法は日本独自のもので、“糊の文化”を共通項として現代に伝承されていますが、この技術は消滅の危機にあります。これら展示品の大部分は、今回が初公開となっています。

趣旨

 京都精華大学では、企画展『糊の文化:型染と筒描き展』を開催することになった。京都の染織産業は、昨今の経済不況と産業構造の激変に伴い、たいへん困難な時期に直面している。
過去20年にわたり京都の伝統産業を守り伝統技術を継承する試みを行ってきた本学は、数年前に「型紙コレクション」の寄贈を受けた。「型染」は世界に誇る日本の染色技術であるが、この技術は消滅の危機にある。この伝統技術の知識普及と継承を考えて、いずれも米をつかった防染糊による伝統的な染色技法である「型染」と「筒描き」の藍染古布を比較展示し、新発見された「型紙」とその調査結果も展示することを企画した。
米食を主とする食生活とわが国の染め技法には深い関係がある。この、糊をぬった部分が染色されないという糊の特性を巧みに利用した染め技法は、意外と一般に知られていない。
名もない美意識の華、知られざる個人コレクションを初公開する。

 

企画委員 田中直一 (田中直染料店 代表取締役社長)
富山弘基 (染織と生活社 取締役主幹)
麻田脩二 (京都精華大学美術学部 教授)
廣田 孝 (京都女子大学家政学部 講師
京都精華大学情報館アドバイザー)
藤岡昭治 (京都精華大学情報館 次長)

 


 

1.型紙の美とその技術
世界一微細な『安達一貫コレクション(現代)』を初公開
「 安達一貫の極型小紋(ごくがたこもん)=六谷博臣の錐彫り型紙」
新発見された『田中直一コレクション(江戸時代)』を初公開
「江戸時代の中型紙と小紋型紙」=山形県鶴岡市で発見」

 

2.型染の美
丹波の型染『河口三千子コレクション(明治時代)』を初公開

 

3.筒描きの美
筒描き狂い『笹倉玄照コレクション(江戸・明治時代)』を公開

 

展示内容

 

1.型紙の美とその技術・・<常設展示室>
田中直一コレクション「山形コレクション」
安達一貫コレクション(京都精華大学所蔵)
2.型染の美・・・<1階展示室>
河口三千子コレクション「丹波生活衣コレクション」

3.筒描きの美
・・・<2階展示室>
笹倉玄照コレクション

糊文化と日本の染め

“糊文化”という特異な視点から日本の伝統染色を眺めると、その染色の発生に人々の食生活との密接なつながりが浮かんでくる。人々の食生活を支えてきた稲・麦・粟・稗・黍・蕎麦などの主食としての穀物のなかで、稲の米・糯米の粘着性に着目して、さらに粘着力を高める技術が考案され、物と物を接着させる糊に加工された。

この糊は織りには糸糊に、染めでは模様染めの防染糊として用いられてきた。型染めや筒描き染めの防染糊、茶屋染めや友禅染めの糸目糊、型友禅染めの色糊など、米粉及び糯米粉から造られる糊の発達なくしては誕まれなかった模様染めが、今もなお伝統染色の主流を占めて伝承されているのは特筆すべき事と言える。さらに加えるなら、世界の染色のなかで糊を防染手法に使うのは、中国の印花布を除いて日本以外にほとんど見ることがないという事も指摘しておく必要がある。

模様染めに防染糊が使われ始めた年代はまだ特定されていないが、専門家の調査研究によると奈良・春日大社蔵「伝源義経所用の籠手」の浅葱地に白抜きの家紋型は鎌倉時代の作とされ、東京国立博物館蔵「二本唐傘文素襖」の型染めは室町中期の作で、いずれも防染糊によるものとしている。また埼玉・喜多院蔵の重要文化財「職人尽図屏風」狩野吉信筆(一五五二~一六四〇)は、桃山末か江戸初期の、当時の職人の仕事ぶりを描いたもので、その図の一枚に型置師が箆を使って糊を置く様子があり、この頃には防染糊による型染めがかなり普及していたことがうかがえる。

しかし、渋紙の筒を使った防染糊による筒描きの始まりについては、まだ詳らかではないようである。

戦乱が終息して江戸時代を迎えると、泰平の世は庶民の社会的な地位の向上と共に華やかな友禅染めがきものファッションの主役となり、綿花栽培の普及に伴う綿布生産の増加は、庶民の衣服に著しい変化をもたらした。

藍染めと相乗して藍の型染め、藍の筒描きが大輪の花を咲かせるにいたった。また、武家社会でも藩ごとの定め小紋は小紋染めの発達を促し、庶民の間にも親しまれるようになった。

こうした歴史的な背景を有する型染め・模様染めは、現在も脈々と各地で伝承されているが、本展では江戸後期から昭和前期に染められた型染めと筒描きの逸品と、小紋型・中形・着尺型・蒲団型など型彫師の技の冴えを感じさせる型紙等を笹倉玄照コレクション、河口三千子コレクション、安達一貫コレクション、田中直一コレクションのなかから選択して展示している。

富山弘基

展示目録

1.型紙の美とその技術 常設展示室
■田中直一コレクション(中形・小紋) 計67点
型売り箱(2箱)51.5×30×14cm(縦×横×高さ)
■安達一貫コレクション(小紋)計10点
極型小紋見本帳24×31×2cm
極型小紋試染(型紙+糊置布+染布)
2.型染の美 一階展示室
■河口三千子コレクション「丹波生活衣コレクション」 計50点
No. 文様 備考 寸法(縦×横cm)
1 菱に木瓜 布団表(三幅) 92.5×89
2 亀甲に唐花 布団表(四幅) 130×128.5
3 輪違いに菊花 布団表(四幅) 132.5×148
4 蜀江錦 布団表(四幅) 140×127
5 蜀江に矢車 布団表(四幅) 150×128
6 毘沙門亀甲 布団表(五幅) 170×155
7 違い亀甲に桜と唐花 布団表(四幅、仕立上) 153×134
8 変り立涌 布団表(一片) 14×26
9 菊亀甲に扇面 布団表(四幅) 143×121
10 ※データなし
11 竹襷に菊 布団表(六幅) 135×192
12 源氏車 布団表(一幅) 76×34
13 矢車に唐草 布団表(三幅) 130×82
14 桐の唐草 布団表(三幅) 133×92
15 三つ柏唐草 布団表(四幅) 163×127
16 蔦唐草二重渦巻き 布団表(二幅) 121×64
17 蔦唐草 布団表(四幅) 144×126
18 葵唐草 布団表(四片) 184×33
19 牡丹唐草 布団表(四幅) 170×124
20 牡丹唐草 布団表(四幅) 144×126
21 牡丹菊唐草 布団表(四幅) 172×122
22 菊唐草 布団表(四幅) 152×126
23 布団表(五幅) 172×150
24 布団表(四幅)/江戸後期 177×128
25 布団表(三幅) 165×97
26 菊と桐の唐草 布団表(二片) 136×33 105×33
27 ちの字・菊桐唐草 布団表(二幅) 78×67
28 菊唐草 布団表(三幅) 143×97
29 菊と牡丹 布団表(一幅) 116×33
30 菊唐草 布団表(四幅) 157×126
31 鶴亀に松枝 布団表(四幅) 141×130
32 向鶴菱 布団表(四幅) 146×124
33 亀・鶴丸松竹梅丸 布団表(四幅)/明治前期 136×130
34 八つ藤大小 布団表(四幅半)/明治前期 150×127
35 三つ藤巴 布団表(四幅)/明治前期 141×125
36 龍と菊花 布団表(四幅半)/明治末期 150×99
37 笹と唐草に菊 布団表(四幅)/明治前期 155×120
38 ドット地桜唐草 布団表(四幅)/明治前期 144×128
39 ドット地桐花唐草 布団表(一片)/明治前期 62×33
40 ドット紋宝相華 布団表(四幅)/明治前期 160×120
41 ドット紋亀甲水の輪重ね輪 布団表(二幅) 152×65
42 ※データなし
43 菊文 布団表(三幅)/明治 165.4×95
44 菊花文 布団表(四幅)/明治後期 143.4×124.8
45 布団表(残片)/明治初期 85.8×33.1
46 松・梅(梅菊ドット) 布団表(四幅)/明治中期 149×121.9
47 丸瓦文 布団表(残片)/明治中期 93×63.4
48 三重襷 布団表(四幅)/明治中期 161.8×153.5
49 菊唐草ドット 布団表(三幅)/明治後期 198.5×92.3
50 雲七宝、花文 布団表(四幅)/明治後期 150×123
3.筒描きの美 二階展示室
■笹倉玄照コレクション 計50点
文様 備考 寸法(縦×横cm)
1 般若 112.0×52.5
2 五三桐紋に牡丹灯籠(仮題)
3 恵比寿 131.5×122.5
4 熨斗に七宝紋と宝珠図 蒲団地 168.0×152.0
5 獅子に牡丹図 117.0×127.5
6 菊慈童図 蒲団地 142.0×125.0
7 浦島太郎に龍宮城図 75.5×122.0
8 貝桶に鶴図 蒲団地 169.0×125.0
9 高砂(熨斗と姥) 194.0×146.0
10 麒麟に鳳凰 154.5×125.0
11 牡丹に獅子 144.0×118.5
12 ※空番
13 紋に花車 135.0×141.5
14 ※空番
15 ※空番
16 松竹梅に鶴亀図(仮題) 夜着
17 熨斗図(仮題) 夜着
18 丸に木瓜紋 飾扇図(仮題) 夜着
19 橘紋 桐に鳳凰図 夜着 148×146
20 酢漿草(かたばみ)紋に扇図 夜着 172×174
21 立沢瀉(たちおもだか)紋に三番叟図 夜着 162×189
22 松竹梅図 夜着 150×147
23 桐に鳳凰図 夜着 140×141
24 角立て四つ目紋に唐草図 夜着 136×144
25 龍胆車(りんどうぐるま)紋 油単 166×122
26 竹に虎図 蒲団地 205×163
27 孔雀図 210×150
28 茶道具図 蒲団地 146×125
29 揚羽蝶紋に折鶴図 蒲団地 150×122
30 向い蝶紋 松竹梅に鶴亀図 油単 208×151
31 鶴亀の丸図 夜着 141×136
32 桐に鳳凰図 205×157
33 三つ蝶紋 桐に鳳凰図 夜着 144×123
34 三つ巴紋 油単 154×94
35 獅子に牡丹図 蒲団地 182×147
36 桐に鳳凰図 蒲団地 142×128
37 唐草図 蒲団地 166×186
38 桐に鳳凰図 蒲団地 155×132
39 桐に鳳凰図 蒲団地 157×132
40 蔓柏(つるかしわ)紋に菊慈童図 風呂敷 73×67
41 菱紋 松竹梅に鴛鴦図 夜着 148×138
42 桐に鳳凰図 蒲団地 196×165
43 三引両紋に桜と蝶花形図 蒲団地 141×123
44 獅子に牡丹図 164×125
45 桔梗紋に牡丹唐草図 油単 161×129
46 熨斗図 181×125
47 二見ヶ浦図 蒲団地 141×128
48 一富士二鷹三茄子に松竹梅図 蒲団地 196×148
49 草花図 183×134
50 柏紋に鶴亀図 油単 206×153
51 松梅に鶴図 蒲団地 150×128
52 五瓜(ごうり)に河骨(こうほね)紋宝尽くし図 油単 197×154
53 抱沢瀉(だきおもだか)紋に葵図 180×138

記録

展覧会の会場風景

 

展示作品紹介

浦島太郎に龍宮城図 175.5 x 122cm
Tale of Urashimataro.
熨斗に七宝紋と宝珠図 蒲団地 168 x 152cm
Noshi Design with Mythical Jewel and Treasure Motif,Shippo mon. Bedding,Futon.