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展覧会Exhibitions

Laurie Toby Edison:”Familiar Men” and “Women En Large”

2000.11.14 - 2000.11.25

開場時間
10:30〜18:30
休館日
11月17日(金)~19日(日)
会場
京都精華大学ギャラリーフロール (2階展示室)

概要

 このたび、京都精華大学ギャラリーフロールにおいて「ローリー・トビー・エディスン写真展:”Familiar Men”and”Women En Large”」と題して、主にアメリカで活躍している写真家の作品展を開催します。

エディソン氏は1996年に東京都立写真美術館で開催された『ジェンダー:記憶の淵より』という展覧会において「ウィメン・エン・ラージ:ファト・ヌードのイメージ」(Women En Large:Images of Fat Nudes)が紹介されてから、日本でも注目されるようになり、今回の来日は3回目となります。その作品シリーズの趣旨について、モデルであったデビー・ノトキンがこう語っています。
―――「現代の広告やメディアが提供するのは、普通ではあり得ないくらいにやせ細った女である。また、いつの時代でも名画や商業美術のイメージはさまざまなサイズや形の理想化された女を提供している。…(中略)…対抗して、『ウィメン・エン・ラージ』シリーズは、女たちの身体に捧げる賛歌である。彼女たちは、成功という概念を到達可能なものとして再定義している。大きなからだで力強く生産的に生きる女たちである。」

今回の展示においては、「ウィメン・エン・ラージ」に加えて、新しいシリーズである、「ファミリア・マン:ヌードの本」(Familiar Men:A Book of Nudes)を初めて日本で発表し、両方合わせて、76点のモノクロ写真を展示する予定です。
西洋美術史の流れにおいても、ときには「男性ヌード」を表わす絵画や彫刻が主流となった中で、ある「理想的男性像」の規範がつくられてきたといえますが、エディソンの”Familiar Men”はその規範を鋭い観点から問う一方、私たちの「男性ヌード」に向ける視線や見方を揺るがし、新たな身体像表現を試みることになります。 “Familiar Men”のモデルであった、教授のジョナサン・カッツはこう語ります。
―――「ローリー・トビー・エディソンの男性ヌード像表現が見せてくれるシワのよった体、やせた体、太った体はごくありふれたもので、だからこそ衝撃的である。ここに男根中心的男性権力とのつながりを見出そうとしても、うまくいかない。そして、いうまでもなく、、それこそが重要点なのだ。深奥からの解放を意味するその重要点は、男性的身体の特権から排除された者にとっての解放ばかりか、ずばり男性的身体をもって生きる者にとっての解放をも示している。」

また、会期中には、シンポジウムも開催致します。是非ともご来場下さいますようご案内を申し上げます。

京都精華大学 人文学部教員 レベッカ・ジェニスン

 

「Familiar Men(ありふれた男たち)」という新しい試み

ローリー・トビー・エディソンのシリーズ作品 Familiar Men は、その表題どおり「ありふれた男たち」の裸体を撮ったものだ。しかし考えてみれば、視覚表現の歴史のなかで男の裸体が「ありふれた」という意味を発現させることは、実はそうなかったことである。 ルネッサンス以来の西洋美術の歴史をふりかえると、男性身体の表現には大きく分けて二つの流れがあった。一つは、完璧な均整美と運動能力の視覚化によって強さ、勇気、雄々しさといった男性一般の美徳を象徴する流れで、男性的美徳は往々にして「人間的美徳」へと普遍化して受容された。もう一つの流れは、力を奪われ、くずおれた男性身体の表現である。イエスの磔刑像やピエタ像がその典型だが、これらもまた身体的存在としての人間に必ず訪れる終わりといった、普遍性の次元での身体表現であった。
エディソンの男性裸像は、あえて普遍性をめざさない点で、これらの流れのいずれにも属さない。エディソン自身は「男性ヌード」と言っているが、実はその作品は既存の表現様式としてのヌードとは大きく違っている。様式に則ったヌード表現は、抽象的な空間に置かれた裸体によってなんらかの普遍性(エロス、男性性、人間性、女性性、あるいはそれらの規範への抵抗も含めて)を表現するものであり、脱衣の過程を想像させない。エディソンの作品では、まず裸の体が在るのが抽象的な空間でないことは重要である。男たちがいるのは彼らが日々生活する空間、すみずみまで彼らがよく知る空間である。彼らがくつろいで座るソファ、書棚に並ぶ本、撮影用ではない暮しの照明、そうしたものが置かれた代替のきかない空間との有機的な関わりのなかに、彼らの裸の体が在る。いつもそこで裸でいるわけはないから、撮影に際して脱衣の過程があったことも感じさせる。私にはエロティックと見える体もあるが、むろん裸の体がいつもエロスとだけ関係しているわけでないことも、その体と空間は語っている。撮影者はここでは訪問者、空間の主は被写体である。撮影者と被写体のあいだに、力ある創り手とその素材という政治学は成立しない。男の体を、その生活の匂い、感触、具体性とともに表現すること、それもエロスばかりでない多面的な生々しさをもつ存在として、「人間」や「男性一般」への普遍化なしに表現することは、ヌード表現の歴史に照らして、「ありふれた」試みではないのである。

大阪女子大学 教員 萩原弘子

関連イベント

 ■マルチメディア講演会
ローリー・トビー・エディソン「Bodies :The Value of Women」

 

会 期:
11月10日(金) 16:30~18:00
会 場:
京都精華大学情報館 1階 AVホール
問合せ:
京都精華大学情報館 AVセンター
TEL/075-702-5140 FAX/075-702-8834

 

 ■ ローリー・トビー・エディソン写真展
「Photographs from”Women of Japan”and “Women En Large”」

 

会 期:
11月20日(月)~11月25日(土)
時 間:
12:00~19:00(土曜日は17:00まで)
会 場:
The Third Gallery Aya
〒530-0047 大阪市北区西天満2-8-1 大江ビル1F
 ◆シンポジウム  「からだ」について
日時:
11月23日(祝・木) 15:00~17:00
会 場:
Bookseller AMUS (申し込み先 TEL/06-4709-7082)
パネラー:
ローリー・トビー・エディソン、石内都 (写真家)
コーディネーター:
加須屋明子(国立国際美術館学芸員)
問合せ:
The Third Gallery Aya TEL&FAX/06-6366-8226
E-MAIL/ayay@osk.3web.ne.jp

シンポジウム

「らしい男/らしくない男」
日 時: 11月25日(土) 15:00~17:00
場 所: 京都精華大学ギャラリーフロール
パネラー: ローリー・トビー・エディソン
小谷真理(評論家)
マット・ソーン(京都精華大学芸術学部教員、マンガ)
山田富秋(京都精華大学人文学部教員、社会学)
主 催: R.ジェニスン(京都精華大学人文学部教員)
問合わせ: 京都精華大学ギャラリーフロール
TEL/075-702-5230 FAX/ 075-705-4076
e-mailfleur@kyoto-seika.ac.jp
 R.ジェニスン研究室 TEL/075-702-5102
E-MAIL/rebecca@kyoto-seika.ac.jp